『ミ・メディア』を手にして―欠けてる円をそのままに(かしのきタールさん)
「なんだかえらいことになった」
自分の本が出版されてしまったとでもいうような、ずうずうしくも
それが不思議に素直な感想だった。
本を手にしてから、わたしはずっと興奮していた。読む前も、読んでいる時も、読み終えてからも、ほとんど同じ興奮状態だったような気がする。少しずつ温度は確かに上昇したが、興奮の種類は変わらなかった。まるで読む前からこの本がわたしに及ぼす作用を知っていたかのようであり、そのことがさらにわたしに「えらいことだぞ」というドーパミン分泌的作用をもたらしたようだった。
「ゴザンス」というカキモノページを知ると同時に知ったネット作家田川ミメイさん。
彼女の出版2作目である『ミ・メディア』が、10月1日遂に発売された。
待ち焦がれたあげく手にしたその本は、わたしがミメイさんという人とその作品を知って以来、不可抗力と思えるほどの強い力で惹かれ常に寄り沿わずにはいられなかったことの意味とその証明の"つめあわせMOOK"になっている、確かにわたしにとってそうに違いないという、至極勝手な感想を持つものだった。
本の中身を知る前から、予約ページを見、目次はすでに読んでいた。
「欠けてる円をまあるくしたい」
それは、何の気なしに目にしていた冒頭の目次の一文だった。
ところが、本を実際に手にし読んでみて、その内容にびっくりした。
――『みんなでワイワイやることが楽しい人は表現者にはならない』
のではないか、なる必要がないんじゃないか、
群れない人、孤独な人、ある種はぐれている人こそが、
自分の円の、どこか欠けている部分をなんとかしようとして、
表現する人になるということなのかもしれない。
『欠けてる円を丸くしたいと思うのは、人間が本来持っている
「欲求」の一つ』だったのではないか――
ということが書かれていたからだ。
わたしはその時ちょうどHPに、『孤独』『群れない人』というキーワードで日記を書きあげたばかりだった。群れることをできる限る避け、孤独でいたいと願い、はぐれている自分について、これでいいのかどうなのか、というようなごく浅はかな思惑に基づく内容をさらっと書いただけであって、ミメイさんと対談相手のクミコさんほどに深い考察をしたわけでは決してない。
それでも、こじつけのようであっても、わたしにとってはミメイさんがらみの件である限り、この偶然は決して偶然ではないと思ったし、そんな、はぐれたわたしが"表現する人と同類である"という励ましを直にいただくことができた、そんな感激に浸ることすらできたのである。
続く『読者が選ぶミメイ作品』には、そのひとつ、「輪舞曲」について書き送ったわたしの感想を掲載していただいていたが、他の作品もすべて知っていた。
どれにも、記憶と思い入れがあった。
「ああ、いいな、こんなふうに描けたら。」ミメイさんが繋ぐ"ことばたち"に対し、わたしはいつもそう感じる。感じるだけでなく、こうしてすぐに書き始める。
そんな力を、ミメイさんはくれる。
『モノを作る人たちへ15の質問』では、ミメイさんのエッセイに幾度となく描かれてきた、放浪の詩人そのままの魅力を惜しげなく放ち輝いているチュウタくんそのヒトの写真に遂に出会ってどきまぎしたり、
書き下ろし『絵物語』の完成度の高さにミメイさんの実力、というかそれ以上の余力、みたいなものを感じてさらに興奮などしたり、わたしのHPに書きこみを下さる九鬼ゑ女さんのお名前が田川未明さんと連なっているのを見てまた走り出しそうなほど興奮してみたり、
ミメイさんの感覚がわたしに近いからといって、ミメオさんはわたしのオットには決して近くないということを再確認したり、
それでもやっぱり、津波から逃げようともせずうっとりと水の壁を眺める夢を見ることが多いと語るミメイさんと、襲いくる津波から逃げまどい溺れ死ぬことを恐れる夢を見ることの多いわたしは似ている、とこれも勝手に再確認したり。
つまり。 この本の隅から隅までを、わたしは瞬時に体感しとりこんでしまった。
今日届いたばかりの『ミ・メディア』はすでに、わたしの分身とか
体の一部であるとか、そんな物となって、いまだ欠けたままの
わたしの円を修復しようと懸命に働きかけてくれるようなのである。
(2004/10/04)
元記事URL:http://plaza.rakuten.co.jp/tenki516/12021
酒呑み家 http://plaza.rakuten.co.jp/tenki516/
ミ・メディアを読んでくださったみなさんからいただいた感想、ブログに書いていただいた記事を、それぞれの方の許可をいただいて転載させていただきました。(元記事がウェブ上に残っている場合は、そのURLも併記しリンクしています)
■218ページ ■A5版 ■1,500円
田川未明・著(監修:ゴザンス編集部) 発行:バーチャルクラスター
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