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ミ・メディア感想

すごいものを読ませてもらった、って感じ(うみねこさん)


こんにちは。ふとしたきっかけからこの作者の瑞々しい感性に触れることになった、うみねこといいます。ミメイさんは今回が紙媒体へのデビュー作とのことですが、その精緻な描写と構成力、うーんすごいものを読ませてもらった、って感じ。心を込めて書評をお届けしますので、おつき合いください。

第1話、「家鳴リ」。タイトルもいいですね、海鳴り、地鳴りにも通ずる強さと恐さ。読み終えてみれば、これ以上のタイトルはないとしみじみするほどです。物質と同化していく魂は、哀しい。ボクは物質にも魂があるんじゃないかって信じているクチですので、よけいにね。

主人公の見せる病的なほどの観察眼、特に姉の言動を追う心の揺れを書き留める描写がすごい。そして、無造作に配しているかのような単語が、折り重なるようにラストに向かって意味を持つ。そのあたりもとても好き。

で、最も気に入っているのは、ラストシーン。臆病となり主体性を手放したかに見えた主人公はしかし、最後にすっくと立ち上がってみせる。素敵です。支配されているように見えたのは、実は幻だったのかもしれないね。
そう思うと薄ら寒い。コワいね、あなたって。

第2話、「ニンギョヒメ」。字数の関係かもしれないけど、やや登場人物の絞り込みが薄いかな、たとえば「シン」と「わたし」の関係だとか。でもそこはあんまり問題なくって、ボクはむしろ、祥子さんのセリフがポイントだと思う。これだけのセリフをつぶやかせる設定としては、やや唐突感がありました。むしろ最後の結び方とか、非常に「詩的」な作品だと思います。ことばの紡ぎ方が、自由詩のそれによく似ているなと思いました。

第3話、「オ リ ヒ メ」。主人公が男性だけあって、他の3作品とは異なったニュアンスが伺える作品。途中の電話のやり取りがちょっと固いかな(笑)。ああ、あとね、「皆で」っていうことばに対する主人公の反応は、ちょっと短絡な気ももしました。細かいけど。この作品も最後をうまくまとめたね。

第4話、「溺レル アナタ」。これいいねー。モチーフが素敵です。母親を重ねたあたりで物語の深みがでたように思います。安定に風穴を開けていく彼女、それに向かって沈みゆく彼。仕掛けてるのは主人公の方、だけど、沈みたいという彼の無意識の欲望が彼女を動かしたのかもしれない。主体と受動は、しかし判別できるものじゃないから。

この作品も非常に緻密な描写力が心地いい。第1話もそうなんだけど、主人公が、運命というか、定められた流れに対して非常に従順で、でもただ従うんじゃなくて、したたかにその流れを変えていく強さを持つ、そんな風に感じました。その姿勢はきっと多くの読者をトリコにするんじゃないかな、なにしろ自分もそうだから。

ああ、あとね。どの作品も主人公がみんなクール。ボクはそこにリアリティを見ました。ボクらはどのみち、あきらめとか受容とかと一緒に日々を泳いでいるでしょ?ほら、小説って、激しい情動ゆえに常軌を逸脱してしまう人とかでてくるんだけど、それはそれはあくまでもフィクション。本当の狂気は常識とのぎりぎりのところにあるんじゃないかって、ボクは思ってる。だからよけいに響いた、かな。

思うんだけど。
情熱の直中にいるうちは、それを文字には出来ないんじゃないかって。指からこぼれそうになって初めて、たぶんいくつかの留め金がはずれて、ことばにできるんじゃないだろうか、と。おそらく作者はそんな水脈のすぐそばに立っている。

ある意味、とても静かな小説です。ですがそれは、凪いだ海の底で黒々と潮が渦巻くような力強さに裏打ちされている。そんなことばのほとばしりに立ち会うことができた自分は幸せだな、と、そんな風にも思いました。

ちなみに自分は自由詩を主体とした文芸サイト、Club Seagull's(http://homepage1.nifty.com/seagull-k/)を運営しています。投稿や文芸論もつらつら展開していますので、お時間ある方、遊びに来てやっててくださいね。




「溺レルアナタ」を読んでくださったみなさんからいただいた感想を掲載させていただいています。(ネオブック上に掲載されていたものを許可を得て転載)
 ■143ページ ■A5版 ■1,300円
 田川未明・著 発行:バーチャルクラスター
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